ドイツのサラブレッドの名前は母の頭文字を引き継いで名付けられるという伝統がある。母の頭文字がファミリーネームを表すというのはなんとも粋な感じがして、カッコいいなあと思っているのだが日本に輸入されてもそれを忠実になぞらえている牝系がある。
シュヴァルツゴルト Schwarzgold
1937年ドイツ・シュレンダーハン牧場で生産されたシュヴァルツゴルトはドイツ1000ギニー、ドイツオークス、ドイチェスダービーを圧勝し、通算12戦9勝2着3回という名牝。
引退後はとうぜん繁殖牝馬となるが、13歳で死亡したため2頭の牝馬しか残せなかった。
しかしそのうちの1頭、シュヴァルツブラウロート Schwarzblaurot が繁殖牝馬として成功、その産駒が次々と母として成功した。
今年の桜花賞とオークスを勝ったスターズオンアースの9代母がシュヴァルツブラウロートであり、スターズオンアースの叔母にはソウルスターリングがいるようにその牝系には日本のG1でも多くの結果を残している。
例えばビワハイジも実はこの牝系に属するがその母母がアイルランドに輸出されたため、ビワハイジの母はアグサンという名前でSラインを繋ぐことはなかったが、ビワハイジはブエナビスタ、ジョワドヴィーヴルを出しているし、その近親にはマンハッタンカフェの名前もある。
日本の競馬とも実に相性のいい牝系と言えるだろう。
昨年のNHKマイルCを勝ったシュネルマイスターもこの牝系でSラインを踏襲した名前を付けられているが、その近親にあたるのが今週のローズSに出走する2戦2勝のサリエラ。半兄に朝日杯FS勝ちのサリオス、全姉に府中牝馬Sを勝ち、エリザベス女王杯と有馬記念を2着したサラキアがいる。
もしサリエラがローズSで秋華賞の出走権を取れば、秋華賞でスターズオンアースとサリエラという2頭のSラインを繋ぐ牝馬が日本のG1で激突することになる。特別に血統に詳しいわけではない私でも、なんとも夢のある話だと感じる。
毎年、凱旋門賞に挑戦する日本馬がいることを見ても、今や競馬が国境を越えて交流があるのは当たり前のことではあるが、血統の世界もますます深く絡み合っていくのだろう。
日本でもこのSラインが大きく育っていくのだろうと想像すると本当にワクワクしてくる。
ちなみに、サリエラの1歳上の牡馬がエスコーラ Escola という名前なのはご愛敬ということで。きっとSコーラだったんだろうね、と。これも目下5戦4勝、なかなかコンスタントには使えないようだが、これも重賞戦線で活躍する日がくるのだろう。